初心者必見！AWSとは？基礎知識や導入のメリットを分かりやすく解説！導入事例も

クラウドコンピューティングの世界で注目を集める「AWS（Amazon Web Services）」。

その名前を聞いたことがあっても、具体的に何ができるのか、どんなメリットがあるのか、ビジネスにどう活かせるのか、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか？

そこで本記事では、以下について初心者の方にも分かりやすく説明します。

AWSとは何か
AWSの主要機能とできること
AWS導入のメリット・デメリット
AWSの導入事例

AWSの導入を検討している方はもちろん、ITの最新トレンドに興味がある方も必見の内容です！

AWSとは

AWS（Amazon Web Services）とは、アメリカの大手IT企業であるAmazon.com, Inc.が提供する、クラウドサービスの総称です。

はじめにAWSがどのようなサービスを提供し、どんな特徴があるのかを紹介します。

AWSはクラウドサービスの一種

クラウドサービスとは、コンピューターリソース（サーバー、ストレージ、データベース、ネットワーク、ソフトウェアなど）を、インターネットを通じて利用できるようにすること。

クラウドサービスと聞いて思い浮かべるのは、Google DriveやDropboxといった一般ユーザー向けのサービスだと思いますが、実はAmazonからも提供されているのです。

そんなAWSは2006年のサービス開始以来、世界中のさまざまな企業や組織で利用され、クラウドサービス市場でトップシェアを誇っています。

AWSの特徴は多様なサービスを組み合わせられる点！

AWSが世界中の企業で利用されている理由には、AWS最大の特徴である「200を超えるサービスの組み合わせが可能」という点にあるでしょう。

AWSのサービスは、Google DriveやiCloudのようにストレージやデータベースを貸し出すだけではありません。

データ分析、ネットワーク、モバイル開発、管理ツール、機械学習など、幅広いサービスを提供しており、これらを柔軟に組み合わせることで、高度で複雑なシステムも比較的簡単に構築できます。

さらに、AWSでは常に新しいサービスや機能を追加しているため、最新のテクノロジーを迅速に導入することも可能です。

つまり、AWSはビジネスの可能性を大きく広げる強力なツールであるから、大企業のみならず中小企業などでも導入が進んでいるのです。

編集部

Amazonといえばショッピングサイトのイメージがありますが、実はAmazonの収益の半分以上はこのAWSによるもの。このショッピングサイトの大規模データ処理のために運用していた技術を応用し、企業や個人向けに提供したのがAWSです。

AWSの主要機能とできること

AWSには200を超えるさまざまな機能があり、できることも多岐にわたります。すべて紹介すると長くなるため、ここではAWSの代表的な機能を使ってできることを説明します。

1.Webサイト・アプリのホスティング

AWSの主要機能の一つに、WebサイトやWebアプリケーションのホスティングがあります。

ホスティングとは、インターネットサービスプロバイダや通信事業者が保有するサーバーを、インターネット経由でレンタルすることです。

AWSが提供する以下のサービスを組み合わせることで、効率的なWebホスティング環境を構築できるでしょう。

スクロールできます

サービス名	機能	利点
Amazon EC2 （Elastic Compute Cloud）	クラウド上で仮想サーバーを利用できるサービス	・迅速なサーバーの立ち上げ・サーバーの性能や数を調整できる
Amazon RDS （Relational Database Service）	クラウド上でリレーショナルデータベースを簡単に設定、運用、スケーリングできるサービス	・データベース構築が簡単・インフラ管理の負担軽減
Amazon CloudFront	コンテンツ配信ネットワーク（CDN）サービス Webサイトの表示速度やコンテンツのダウンロード速度を向上させる	・世界中でコンテンツの高速配信が可能・ユーザー体験（EX）の向上
AWS Elastic Beanstalk	PaaS（Platform as a Service）サービス Webアプリやサービスの実行環境を自動的に作成・管理する機能	・開発サイクルの短縮・インフラ管理の負担軽減

ちなみに、上記にある仮想サーバーとは、1つの物理サーバーを仮想上で複数のサーバーとして使えるようにしたもの。

リレーショナルデータベースとは、表形式の複数データを関連付けて使えるようにしたデータベースのことです。

2.クラウドストレージとデータ管理

AWSのAmazon S3を使うことで、クラウドストレージとデータの管理が可能になります。

クラウドストレージとは、インターネット経由で利用できるファイルの保管場所のことです。

そんなAWSのAmazon S3の特徴は以下のとおり。

機能

インターネット経由でデータを保存・取得できるオンラインストレージサービス

利点

データ量に応じてストレージ容量が調整可能
- サーバーの負荷を軽減＆Webサイトのパフォーマンスを向上
データへのアクセス制御が簡単
- サイバー攻撃や内部不正を抑止
耐久性＆可用性が高い
- 災害時のデータ消失のリスクを軽減＆迅速なデータ復元

また、Amazon S3のストレージクラスの1つである、Amazon Glacierというサービスを使えば、使用頻度の少ないデータを安価で長期保存できます。

法律で長期保存が義務付けられている文書や、将来の分析に備えて保管しておきたい過去のデータなどを安全に保管する際に向いているでしょう。

3.ビッグデータ分析と機械学習

AWSを導入すれば、自社で一からシステムを構築しなくても、最新のAI技術として、ビッグデータ分析・機械学習技術を簡単に利用できます。

ビッグデータ分析とは大量かつ多様なデータを分析すること。ビジネスにおいて有用な情報を抽出し、戦略策定などに活用できます。

一方、機械学習ツールとは、与えられた膨大なデータからルールやパターンをAIが学習し、特定のタスクを実行するためのモデルを自動的に構築する技術です。

AWSの主なビッグデータ分析・機械学習サービスには以下が挙げられるでしょう。

スクロールできます

サービス名	機能	利点
Amazon EMR （Elastic MapReduce）	膨大なデータを効率的に処理＆分析するサービス	・処理速度の向上・Webサイトのアクセスログの分析 ⇒CV向上につながる
Amazon Redshift	データウェアハウスサービスあらゆるデータを構造化して蓄積＆高速分析	・高度なデータ分析が得意・フルマネージドサービス ⇒作業の負担軽減
Amazon SageMaker	機械学習モデルの構築、トレーニング、デプロイが簡単に行えるサービス	精度の高い需要予測が可能 ⇒機会損失リスクを軽減
Amazon Comprehend	テキストデータから洞察を得るサービス	SNSの投稿からポジティブorネガティブな感情を抽出 ⇒企業・ブランド・製品のイメージの改善などに活用

高度なデータ分析や予測モデルの構築により、マーケティング戦略の迅速な立案や調整が可能になります。

ちなみに、上記にあるデータウェアハウスサービスとは、複数のシステムから集めた大量のデータを時系列に保管したデータベースのこと。

デプロイとは、開発したソフトウェアやシステムを実際に利用可能な状態にする作業のことです。

AWSを導入するメリット

ここからは、ビジネスにAWSを導入することで得られるメリットを紹介します。さっそく見ていきましょう。

メリット1：コスト削減

AWSの導入によりコスト削減が期待できるでしょう。理由は以下の通り。

初期投資を削減できるから
従量課金制だから

まず、初期費用についてですが、AWSの導入にはインターネット接続とAWSアカウントがあればいいので、初期費用を数十万円程度に抑えることが可能です。

これにより、スタートアップ企業や新規事業への参入障壁が下がり、イノベーションの促進が期待できるでしょう。ちなみに、自社でサーバーなどを購入して運用する、オンプレミス型の場合、数千万円規模の初期費用が必要です。

次に、AWSは利用した分だけ支払う従量課金制を採用しています。使っていないリソースには費用がかからないため、無駄な支出を抑えられるのです。

メリット2：柔軟性と拡張性

AWSの特徴の1つである柔軟性と拡張性によって、以下のメリットが期待できます。

リソースを迅速に調整できる
ニーズに合ったシステム構築が可能
最新技術の導入が容易

AWSを導入すれば、ビジネスの成長・市場や需要の変化などに合わせて、リソースを迅速に調整できます。例えば、たった数分でサーバーを追加したり、必要に応じてストレージ容量を増減したりすることが可能です。なお、オンプレミス型の場合は、新しいサーバーの調達・設置から設定まで、数週間から数ヶ月かかることもあります。リソースの調整はコストの最適化にもつながるでしょう。

また、AWSでは多岐にわたるサービスを提供していますが、これらは組み合わせて利用できます。サービスを連携させることで、ニーズに適したシステムを構築できるでしょう。

さらに、AWSを活用すれば簡単に最先端技術を導入できます。例えば、AIや機械学習といった技術を導入する場合、従来であれば専門家の雇用や高価なハードウェアの導入が必要です。しかし、AWSのサービスを利用すれば、費用を抑えて比較的簡単に導入できます。

そして、AWSは拡張性に優れているので、システム規模やサーバーを段階的にスケールアップすることが可能です。逆に、状況に応じて一時的にスケールダウンもできるため、無駄を省けます。

メリット3：セキュリティと信頼性

AWSはセキュリティの高さにより、実際に活用している企業や組織から信頼を得ています。

AWSが実施しているセキュリティ対策の例を見ていきましょう。

AWSのデータセンター
- アクセス権限を持つ人員を限定し、不正侵入のリスクを最小限に抑える
ファイアウォール
- ネットワークやコンピューターを外部の攻撃や不正アクセスから守る
Amazon GuardDuty
- AWSのアカウントやワークロードを継続的に監視して、攻撃や攻撃の兆候を検知する
データ暗号化
- 保存と転送中のデータの両方を暗号化し、第三者による閲覧や悪用を防ぐ
AWSの高可用性
- 世界各地にデータセンターを保有＆自動バックアップの作成により、障害発生時に迅速な復旧をサポート

情報漏洩や紛失といった事故は、企業の信頼性・信用性を損ない、業績や株価に大きな影響を及ぼします。

AWSを導入すれば、その強固なセキュリティにより、自社のデータを安全に保護できるでしょう。

メリット4：グローバル展開の容易さ

AWSのグローバルインフラストラクチャ（＝AWSが世界中に保有するデータセンター）を活用すれば、比較的少ない投資でグローバルビジネス展開を実現できます。

データセンターとは、Webサイトやアプリを実行するためのサーバーやネットワーク機器の保管、システムの運用に特化した施設です。

そんなAWSの活用によりグローバル展開が容易になる理由は以下の通り。

世界中のユーザーにサービスを提供する際、国内と同等の速度でアクセスできる
各国の法規制に対応しやすい＝法的リスクを最小限に抑えることが可能
- 世界中にデータセンターを持っているAWSなら、各国の法規にかなったデータ管理が可能
AWSは多言語・多通貨対応に対応＝Webサイト・アプリの多言語化を実現できる

ここまで紹介してきたAWSのメリットは、ビジネスの成長を加速させる原動力となります。ビジネスの可能性を広げたい企業こそ、AWSを積極的に導入すべきでしょう。

AWSを導入するデメリット

AWSはメリットが多い一方で、課題や注意点も存在します。導入してから後悔しないためにも、ここでAWSのデメリットも確認していきましょう。

デメリット1：コスト管理の複雑さ

先述した通り、AWSの料金体系は使用した分だけ支払う従量課金制で、コストを抑えられるというメリットがあります。

一方で、以下の理由によりコスト管理が複雑化しているのは、デメリットと言えるでしょう。

多様なサービスと料金オプション
- 料金はサービスや契約内容によって異なり、各サービス内には複数の料金オプションが存在する
リージョンによる価格差
- リージョン（データセンターの所在地）ごとに価値が異なる
動的リソースの使用
- リソースの使用量が変化する機能を使うと、コストの予測が難しくなる

AWSのコスト管理の複雑さは逆に言えば、細かいレベルでのコスト最適化が可能であることを意味します。

効果的なコスト管理を可能にするための対策は以下の通り。

次のAWSサービスを活用する
- AWS Cost Explorer：コスト分析ツール
- AWS Budgets：設定した予算を超えるとアラートで通知
- AWS Trusted Advisor：コストの最適化案を提示
コスト最適化レビューや不要リソースの削除を定期的に行う
コスト管理に関する教育やガイドライン整備を行う

なお、AWSでは主要サービスを一定の範囲内で無料で利用できる、「無料利用枠」を提供しています。

基本的な使い方を学びつつ、実際の運用を想定したテストや検証、自社のニーズに合うかどうかを確認できるので、ぜひ活用してみてください。

デメリット2：メンテナンス日が不定期

AWSにはメンテナンス日が不定期に設けられています。メンテナンス中は一時的にシステムが停止したりパフォーマンスが低下したりするため、そのときの対応を事前に決めておく必要があるでしょう。

メンテナンス中の対応例としては以下の通り。

業務時間を変更する
メンテナンスウィンドウを設定する
他のハードウェアを使用する
冗長化やフェイルオーバーを行う

ただし、メンテナンスのスケジュールはAWSから事前告知があります。ある程度余裕をもって対応できるため、それほど大きなデメリットにはならないでしょう。

デメリット3：カスタマイズの自由度が低い

AWSは手軽に運用できる点がメリットですが、カスタマイズの自由度が低いというデメリットもあります。

例えば、リソースの増減は決められた単位で行う必要があり、用意されているプラン・オプション以外での調整は基本的にできません。

つまりAWSは、特定の要件に合わせてハードウェアを細かく調整することが難しいため、AWSのサービスに合わせて自社の運用を調整する必要があるでしょう。

もし、特定のカスタムソフトウェアや特殊なハードウェア要件を持つ場合は、AWSではなく、カスタマイズ性のあるオンプレミスを導入することを検討してみるのも良いかもしれません。

オンプレミスとAWS（クラウド）の違いについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

AWSの導入事例

ここからは、実際にAWSを導入してビジネスを成功に導いた企業の例を紹介します。AWSの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

AWS導入事例1：株式会社リクルートの場合

まずは、人材と販促の事業領域を展開する、株式会社リクルートのAWS導入例を紹介します。

AWS導入の背景	・運営とコストを最適化するため・応対品質向上のため
AWSを選んだ理由	・マネージドサービスである・他のシステムとの連携が容易・キャパシティプランニングが自動的に行われる・従量課金制で長期契約やライセンス料の前払いが不要
AWS導入後の効果	・電話の待機時間の短縮＝顧客満足度の向上・インフラコストの削減・業務効率の向上

株式会社リクルートでは、AWSが提供するAmazon Connectを活用して、事業特性に合わせたコールセンターを構築しました。

Amazon Connectとは、クラウド型のコンタクトセンターサービスです。コンタクトセンターシステムや自動受付システムを短期間かつ低コストで構築・運営でき、電話や自動音声応答システム（IVR）による顧客対応ができます。

そして、Amazon Connectの活用により、顧客満足度や作業効率の向上、コストの削減を実現しました。

AWS導入事例2：PayPayカード株式会社の場合

次に、キャッシュレス決済サービス「PayPay」と連携した、クレジットカードやフィンテックサービスを提供する、PayPayカード株式会社のAWS導入例を紹介します。

AWS導入の背景	・基幹システムの性能に限界を感じたため・少額決済事業を拡大していくため
AWSを選んだ理由	・柔軟性と拡張性に優れている・社内の一部、Yahoo!、PayPayで利用実績がある・クレジットカード業界のセキュリティ基準に対応している・金融ドメインで幅広い実績がある
AWS導入後の効果	・ビジネスの変化に対する柔軟性を確保（一時的なリソースの増強などが可能に）・PayPay との連携が強化

PayPayカード株式会社では、約10TBのデータベース、150の億レコードに達する大規模基幹システムをAWSへ移行しています。

サーバーはAmazon EC2、データベースはAmazon RDSで構成し、可用性を考慮して複数のアベイラビリティゾーン（AZ）を活用しました。

他にも、PayPayカード株式会社では以下のAWSサービスを利用しています。

Amazon FSx for NetApp ONTAP：フルマネージド型のNetApp ONTAPファイルシステム
NetApp ONTAPとは、高度なデータ管理機能と優れたパフォーマンスを提供する、ファイルシステムのこと
AWS Security Hub：AWSリソースのセキュリティとコンプライアンスを管理する、クラウドセキュリティポスチャ管理（CSPM）サービス
AWS Config ：AWSリソースの設定を評価、監査、審査するサービス

これらのサービスにより、ビジネス要件に合わせた柔軟性と、決済サービスに求められる可用性の強化に成功しています。

AWS導入事例3：ニンテンドーシステムズ株式会社の場合

最後に、任天堂が展開するビジネスのデジタル部分に関するシステムの開発・運用を行う、ニンテンドーシステムズ株式会社のAWS導入例を紹介します。

AWS導入の背景	・サービス成長を支えるため・アクセスの急増に対応するため
AWSを選んだ理由	・社内で利用実績があった・Oracleデータベースを利用可能だった
AWS導入後の効果	・アプリ開発者の生産性が向上・アプリ開発者の運用の負担軽減・新サービス立ち上げの時間短縮

ニンテンドーシステムズ株式会社では、AWSのマネージドサービス（業務の外部委託）を活用して、システム開発者向けの共通プラットフォームの整備を進めています。

アプリケーション実行基盤にはAmazon ECSを採用。Amazon ECSとは、コンテナ化されたアプリケーションを簡単にデプロイ、管理、スケーリングできる、マネージド型のコンテナオーケストレーションサービスです。ちなみに、コンテナとはアプリケーションを動かすための環境を仮想化する技術のこと。

ニンテンドーシステムズ株式会社では、AWSのマネージドサービスの活用により、開発の効率化や時間短縮を実現しています。